
レース中の苦しい場面を克服する方法
こんにちは。ランニングショップHolosの小谷です。
販売中の雑誌『ランナーズ』4月号に先日開催したセミナー『最先端の脳科学をランニングに活かす』のことが掲載されています。
このセミナーではランニング中の苦しい場面を乗り越えるためにどんな工夫があるか、脳科学者の本田学さん(川の道フットレース513km完走者)に解説していただきました。
セミナーでは私が12月に走った台湾の24時間走(264kmの自己ベスト達成)で効果を実感したメンタルリハーサルのやり方もシェアしました。本田さんいわく、このメンタルリハーサルも脳科学的にとても有効だとのこと。
今日はこのメンタルリハーサルについてシェアしたいと思います。
ちょうど明日は東京マラソンですが、明日が大会という人でもやる価値があると思います。
メンタルリハーサルの3つのステップ
メンタルリハーサルは次の3つのステップで行います。
- 克服したいシーンを特定する
- そのシーンでどのようなセルフトークをして、どのように振る舞うかを決める
- そのシーンで理想的に振る舞う自分を一人称の視点でイメージする
克服したいシーンを1つ特定する
効果的なメンタルリハーサルをするために最初にすることは、自分が苦手意識をもっている克服したい場面を特定することです。(複数にしても良いですが、まずは簡単のため1つ決めましょう)
例えば、私の場合はウルトラマラソンでトボトボ歩きだしてしまうシーンがあげられます。
私は基本的に良い記録を目指して大会を走っているので、好記録が狙えなくなると一気にモチベーションが低下してしまう傾向がありました。ネガティブ思考のサイクルにはまって、思考がさらなるキツさを呼び、最終的には耐えられなくなってリタイアすることもたくさんありました。
歩きだしてしまうと「歩いている自分が情けない」と感じてしまうのでした。
しかし、先日の台湾24時間走に出場するときは「酷い記録でも絶対に最後までコースに残って、少しでも前に進むところを皆に見せたい」と強く願ったのでした。
そのシーンでのセルフトークを決める
私は自分が走れなくなり、トボトボ歩くしかできなくなったら、どのように立ち振る舞いたいかを考えて、次のようなセルフトーク(自分の心の中での会話)をすることにしました。
「こうして、諦めずに頑張り続ける自分がカッコいいんだ!」
「冷静に復活するのを待つんだ。これが自分らしい走り方だ!」
セルフトークのサンプル
・オーバーペースになりやすい人、レース前半に冷静さを保つのが苦手な人
(周囲のランナーに抜かれたり、集団から少し遅れてしまっても)「いいぞ! マイペースで冷静沈着! これが自分の走りだ!」
・キツくなりペースがジリジリ落ち始めたとき
「次の1kmだけ頑張ろう。その後の心配はしない。」
「自分だけじゃない、みんな苦しいんだ!」
「なんてチャレンジングなレース! これが私が心から望んでいたことだ!」
おそらく、多くの方にとって特に気になるのは、キツくなった場面でのセルフトークだと思います。これには正解は無く、自分がその大会でどのような走り方をしたいかにもよって変わってくるでしょう(リスクを負って最高記録を目指すのか、確実にそこそこの記録を出したいのか)。フルマラソンとウルトラマラソンでも考え方に違いが出てくると思います。
メンタルリハーサルと大会経験を繰り返すうちに、自分にあったセルフトークがわかってくると思います。今の段階では、まずは自分が直感的に良さそうだと思うセルフトークを考えてみてください。
一人称の視点でイメージすることを繰り返す
シーンとセルフトークが決まったら、あとは脳内で繰り返しイメージすることです。
一人で落ち着ける場所で座り、目をつむって呼吸を整えます。
気分が落ち着いたら1回3~5分くらいかけてシーンをイメージします。
このとき、一人称の視点でイメージするようにしてください。(映画で自分が登場しているシーンをイメージするのではありません)
そして、決めていたセルフトークを実際に自分に語り掛けていることを想像します。
イメージは鮮明になるほど効果が高いと考えられます。大会の動画や写真を見たり、ストリートビューでコースの一部を見ておくことは役立ちます。
人によって鮮明にイメージしやすい五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)には違いがあるとされています。「五感のどれをメインで活用するか」という視点で考えると、イメージが上達しやすいかもしれません。(ちなみに私は接地時の衝撃を受ける感じとか、体の感覚がイメージしやすいです)
私の例を描写するとこんな感じです。
夜の陸上トラックでトボトボ歩きだした私。周りのランナーも歩いていたり、大幅にペースダウンしている人が目立ちます。肌寒さ、ちょっと咳込みそうな感覚、脚が固まって痛いこと。歩き出してからはなぜか足の裏が痛く感じる。静かな空間にランナーの息遣いと足音が響きます。
そんな中で私は「今回は記録は出なかったけど、最後まで頑張ることが次につながる。最後までやりきれば、記録はどうあれ胸を張れることを知っている。これがカッコいい、自分らしい走りだ!」とセルフトークで自分を励まします。
キツイときでは難しい、だからまずは楽なときに繰り返し練習する
人によってはこのようなイメージトレーニングを馬鹿らしく感じる方もいらっしゃるかもしれません。ただ、身近なものでは避難訓練、専門的なものではパイロットのフライトシミュレーター訓練のように、事前に反復練習することはあらゆる分野で実績があります。
マラソン中の苦しい場面でいきなり正しいセルフトークをして、それに伴う強い心を発揮することは多くの人にとっては困難です。しかし、苦しくない場面でなら、誰もが正しいセルフトークをすることができます。そして、人は繰り返せば繰り返すほど、その行いを自然にすることができるようになります。繰り返しの効果はスポーツのスキル習得だけでなく、考え方の習慣形成においても抜群です。
練習すれば、誰もが今よりも強い心を持てるハズです。ぜひ皆さんも苦手なシーンの克服にメンタルリハーサルを試してみてはいかがでしょうか。
そのシーンが実際にやってきたときに、「あっ、キタキタ! 練習してきた場面だ!」と余裕をもって対応してやりましょう!
大会が近い人向けの繰り返しスケジュール
明日が大会の場合
このブログを読んだあとに、すぐに1回やってみましょう。そして、今晩寝る前にもう1回。そして、明日の起床後すぐにもう1回。3回繰り返すだけでも、何もしなかったよりは成功確率が確実に高まります。
1~2週間後の大会
今晩寝る前に1回やってみましょう。明日から、毎日1~2回(起床直後か寝る前がおすすめ)を大会当日まで繰り返しましょう。
心の強さとサプリメント
苦しい場面で粘れるか否かは肉体的には脳の疲労が関係していると考えられています。Catalyst Spiritsはアダプトゲンという中枢性疲労(脳の疲労)に実績のある成分をランナー用にブレンドした商品です。キツイ場面でも粘り強く走れるようになりたいという方におすすめです。