
スピード練習が習慣化し、記録が伸びる3つの心がけ(スピ練革命#2)
こんにちは。
ランニングショップHolosの小谷です。
今日は前回に続いて、スピード練習革命シリーズ(*)の第2回です。
*「これまではスピード練習を継続できなかった人も、今年からはスピード練習を習慣化して新しい自分を手に入れよう!」というテーマです
第1回のアーカイブはこちら
『スピード練習が続かない人のためのスピ練革命』
前回はスピード練習の継続を困難にしている原因として
①体力的な壁
②心理的な壁
の2つがあるというお話をしました。
①の体力的な壁への対策としては、スピード練習に特有な疲労対策としてサプリの活用法を紹介しました。
②の心理的な壁の対策として
- 「追い込まないと意味がない」は誤解→継続性が効果を生む
- 「この設定でやらないとダメ」という思い込みを手放そう
- 「万全な状態でないとできない」という呪縛から解放されよう
という私の失敗体験をシェアしました。
最後には皆さんにも類似した心理的な壁(思い込み)はありますか? と問いかけましたが、何か気づいたことはありましたか?
今回はこの心理面について更に深掘りして、スピード練習の継続率を高めたり、効果の高い練習ができるようになる手がかりを模索していきたいと思います。
心理的な壁はスピード練習の頻度を低下させて、走力向上を妨げている
まず、心理的な壁がどのような結果を私たちにもたらしているのかを考察してみましょう。
1つめは、シンプルにスピード練習を実行できる回数を減らしてしまいます。
スピード練習はどれくらいの頻度で実施するのが良いのでしょうか?
トップレベルのフルマラソンの選手では、週3~4回くらい実施しているようです。
自転車競技では週5回くらいの高頻度でのスピード練習を短期的に集中して行うことで成果を上げているプロ選手もいるようです。
私たち市民ランナーの場合は週1〜2回継続できれば十分でしょう。
ですが、心理的な壁があると、この頻度を安定して保つことすら難しくなりますよね。
自信の喪失やネガティブな感情を生み、トレーニングへの適応を悪化させてしまう
皆さんはインターバルやペース走で設定ペースで走り切ることができず、ガッカリしたり、自信を喪失してしまったことはありませんか?
あるいは、何とか走り切ったものの、ヘトヘトになってしまい達成感などのポジティブな感情が感じられなかったことはありませんか?
こういった感情はスピード練習から私たちを遠ざけるだけでなく、本来なら得られるはずだったトレーニング効果までも減少させてしまうリスクがあります。
実際、こうした「認知」が私たちの身体反応に影響を及ぼすことは、科学的にも示されています。
これに関する興味深い研究を紹介します。
ハーバード大学の心理学者アリア・クラムとエレン・ランガーによって2007年に発表された研究です。
84人のホテルの客室清掃員を対象に、彼女たちの仕事が米国保健当局の運動ガイドラインを満たしていることを一部のグループに伝えました。
4週間後、この情報を受け取ったグループでは、平均で約0.9kgの体重減少、血圧の約10%の低下、体脂肪率やBMI、ウエスト・ヒップ比の改善が見られました。
一方、情報を受け取らなかったグループにはこれらの変化は見られませんでした。
つまり、実際の行動や食事内容が変わらなくても、「自分の今しているこの仕事は良い運動量になっているんだ!」という気づき(自己認識の変化)だけでこれらの健康指標が改善されたということです。
信じがたいかもしれませんが、私たちはこれをプラシーボ効果(心理効果)として既に知っているはずです。
医者から薬と言われて出されたものを飲むと、それが薬でなくても効果を発揮します。
「病は気から」とは人類が気づいた正しい経験知ですが、「トレーニングも気から」ということに現代科学は気づき始めています。
これらの知見を応用すると、練習メニュー的には全く同じスピード練習をするにしても、私たちがそのメニューについてどう理解し、どんな感情で走るのかをコントロールすることが重要ではないかと私は思うのですが、皆さんはいかがですか?
心理的な壁を払拭して、物理的には同じ練習でも、より高い効果を手にしたくはありませんか?
これが私から皆さんへのご提案です。
継続的で効果的なスピード練習をするための3つの心がけ
ここまでの話で、心理的な壁がいかに私たちの可能性を制限してきたかのイメージが掴めてきたかと思います。
では、ここからはその壁を壊すための新しい考えを頭にインストールしていきましょう。
ポイントは「カジュアルなスピード練習から始めて、それを定着させていきましょう」ということです。
1.体力が万全でなくてもスピード練習を実施してOK
前回も話しましたが、以前の私は『10段階の体力ゲージ(0が疲労困憊で10が完全リフレッシュ)』があったとしたら、体力ゲージ=8~10に回復させてからスピード練習をしていました。
しかし、今では体力ゲージ=6~8くらいで、そこそこのスピード練習を高頻度でこなしていく方が成果が出やすいと直感しています。
スピード練習を予定していた日に少しだけ疲労感が残っていたとして「完全にリフレッシュした日にやろう」と翌日以降にスライドする癖がつくと、どんどん頻度は低下していきます。
疲労回復のためのサプリ活用法でも紹介しましたが、市民ランナーは仕事などのストレス・認知的な負荷がかかっており、それも日によって変動するものですから、スピード練習のために入念に準備していたのに突発的なトラブルで疲労感が残ってしまうことは珍しくありません。
そういう「万全な状態」がそもそも難しい境遇で私たちは走っているのですから、この文章をお読みの皆さんの場合はスピード練習を開始するハードルをもっと下げて良い人が多数派なのではないかと推測します。
*もちろん、本当に不調のときは回復を優先しましょう
2.日々の調子に応じて練習負荷を大胆に調整するようにしてみよう
スピード練習を実施するとき、ペースや距離(インターバルの本数など)の目安を私たちは持っていると思います。
目安を持つことは大切ですが、実際に練習するときは日々の感覚に応じて今よりも大胆に調整してみてはいかがでしょうか。
例えば、通常時の目安が
1000m×6本 @4:30/km レストはジョギング90秒
という人だったとしましょう。
もし、「スピード練習をする気持ちはあるけど、少し体の重さや動きにくさがあるかもな」というとき、皆さんならどれくらい負荷を落とすのを許容しますか?
人それぞれ考え方が違うと思います。
昔の私なら、この設定を意地で守る練習をしていたと思います。
でも今なら、例えばこんな感じのバリエーションを考えるかもしれません。
- 1000m×6本 @4:45/km レスト:ジョギング90~120秒(後半になるにつれてレストを長くする)
- 800m×7本@4:45/km レスト:ジョギング90秒
本数(距離)を減らしても良いので、ペースを大事にしたい場合
- 800m×6本@4:30/km レスト:ジョギング90秒
- 1000m×3本@4:30/km + 600m×3本@4:30 レスト:ジョギング90秒
上記は練習を開始するときの計画です。
実際に走ってみて、想定以上に体が重く感じたら、さらに軽減して良いでしょう。
このとき、理性的に「今日を意味ある練習にして、かつ明日以降も練習の継続性をもつために軽減するんだ」と思って判断することが大切です。
「こんなに軽くしてしまって自分は根性が無いなぁ」というセルフトークにならないように注意しましょう。
あなたはもう十分に頑張っていますし、今日の体調に応じた練習に最適化しているだけなのですから。
3.スピード練習は全体として「快適なキツさ」でOK。
私は昨年度に70km、24時間走と自己ベストを更新することができましたが、その練習を振り返って改めて思ったことは「強くなるのに派手な練習は基本的に必要ない」ということでした。
派手な練習より地味なそこそこの練習を高頻度のサイクルで安定して回していくことが今の私の基本方針です。
スピード練習でいうと、練習後に「苦しかった」とヘトヘトに終わるのではなく、「頑張ったぞ!(本気を出せば、まだ行けたけどね) 達成感!」とポジティブな感情が得られる負荷に調整するのがおすすめです。
疾走区間(息が上がっているとき)も、それを辛いとネガティブに感じるのではなく、やりがいのある快適なキツさといいますか、苦しさに前向きな気持ちになれる負荷が良いと思います。
個人的には、スピード練習を「キツい練習」と呼ばずに「チャレンジングな練習」と呼ぶようにしています。
「チャレンジング」は「困難だが、挑戦しがいのある、やりがいのある」というような意味です。
能力を試されるような、難易度が高いが、興味を惹かれる状況を指します。
私たちは言葉の使い方1つで認識が変わります。
認識が変わると、行動も結果も変わるのでしたね。
ぜひ今後はポイント練習では「チャレンジングな練習」という言葉を使うようにしてみてください。
私はこれで練習中の気持ちが前向きに変わったことを実感しています。
まとめ
今回は心理的な壁がもたらす悪影響を深掘りし、代わりとなる3つの考えを提案しました。
まずは頭で理解し、意識しながら日々実践していくことで古いプログラム(心理的な壁)が削除されていき、代わりに新しいプログラムがインストールされていきます。
新しいプログラムが馴染んでいくまで、地道に繰り返していくことがポイントです。
ぜひ次からのスピード練習で
- 体力が万全でない日もスピード練習をやってみる(開始のハードルを下げる)
- 調子に応じて今までより大胆に負荷を落としてみる
- 練習中、練習後がポジティブな感情になる負荷にする
を実践してみてください。
次回はこの新しいプログラムとの相性が抜群の練習メニュー『ファルトレク』について、解説していこうと思います。
具体的な練習メニューがわかり、これでスピード練習が継続できる人になるためのピースが揃います。
ここまでお読みいただくのにエネルギーを要したと思いますが、完結まであと少しお付き合いください。
それでは、次回もお楽しみに。