
スピ練が苦手でも大丈夫! 走力を伸ばす3つのファルトレク活用術(スピ練革命#3)
こんにちは。
ランニングショップHolosの小谷です。
今回もスピード練習革命シリーズの第3回ということで、「スピード練習を習慣化できるようになって、記録向上を目指したい」という方を応援する内容を綴っていきたいと思います。
第1回はこちら
『スピード練習が続かない人のためのスピ練革命』
第2回はこちら
『スピード練習が習慣化し、記録が伸びる3つの心がけ』
前回までの内容で
『私たちは自ら心理的にスピード練習のハードルを上げてしまい、その結果として実行や継続が困難になってしまっている』
というお話をしてきました。
そして、「次のようなマインドセットを持とう」という提案をしました。
- 体力が万全でなくてもスピード練習を実施してOK
- 日々の調子に応じて練習負荷を大胆に調整するようにしてみよう
- スピード練習は全体として「快適なキツさ」でOK
また、練習の効果を高めるためには、「私たちがその練習のことをどう認識していて(いってみれば、効果があると心から信じているか)、どのような感情でその練習を実行するかが大切」ということも学びました。
では、上記のマインドセットを実践しやすくするためには、具体的には何をすれば良いのでしょうか?
その回答が今回のテーマである『ファルトレク』を練習メニューに取り入れ、かつそれを変幻自在に操れるようになることだと私は考えています。
ファルトレクとは
ファルトレク(スピードプレイとも言います)はスウェーデン発祥のトレーニング法で、ペースを自由に上げ下げしながら走るスピード変化走のことです。
信号や坂道、公園の木などを目印にして速く走ったりゆっくり走ったりすることで、心肺機能やスピード持久力をバランスよく鍛えることができます。
この手法は、世界のトップマラソン選手たちも実践しており、たとえばエリウド・キプチョゲ選手もレースに向けた調整期にファルトレクを取り入れていることで知られています。
また、負荷の変化に慣れるという点では、自転車競技やトライアスロンなどの持久系スポーツにも類似のトレーニングがあり、実戦的な走力を養うのに効果的とされています。
ファルトレクは精神的プレッシャーが低く、柔軟に調整しやすい
ファルトレクのメリットは「200m×20」のようなザ・インターバルという感じの練習と違って、精神的なプレッシャーが低く、練習を継続しやすいことだと私は考えています。
ペースや距離の設定が厳密に決まっていないので、体調に応じてメニューを調整しやすく、オーバーワークの予防にもなります。
インターバルなどでありがちな「設定ペースが守れなかった」という自信喪失になることも少なく、精神的にポジティブに練習を積み重ねやすいです。
私は朝起きたとき、その日のメニューがインターバルだと気が重くなることがありますが、ファルトレクではそうなりません。
「とりあえず走りに行こう。走りながら負荷を調整すれば良いや」という感じです。
この気持ちの違いが、長期的には大きいと思います。
また、ファルトレクを終えてクールダウンのジョグに入るときは、気分が良く、やりきった達成感で「ヨシッ! 今日もやってやったぜ!」と自然とガッツポーズや喜びの声が出てきます。
一日の爽快な始まりであり、世界のすべてが上手くいっている気持ちになります。
「自分にとって大事なことを早朝から1つやり遂げた」「もう今日一日は成功が確定したから大丈夫だ」という安心感も得られます。
負荷を柔軟に調整できるファルトレクなら、こんな素敵な気持ちでスピード練習をすることができます。
そして、この感情がポジティブな心理効果を生み、トレーニングへの適応や回復を促進してくれます。
ファルトレクの3つのバリエーションを使いこなそう
以下に私が気に入っているファルトレクの3つのパターンを紹介します。
持久力重視型|バランスのとれた効率的60分間トレーニング
15分 ウォーミングアップのジョギング
(3分 疾走+2分 ジョギング)×3本
(90秒 疾走+90秒 ジョギング)×5本
(30秒 疾走+60秒 ジョギング)×5本
10分 クールダウンのジョギング
全体が60分程度で終わる時間効率の良い練習です。
疾走区間の時間が30秒~3分と幅があり、幅広いスピード域に対して刺激を与えることができるのがポイントです。
今回紹介する3つのファルトレクの中でも、800~1000m×4~6のようなロングインターバルと200~400m×10~20のショートインターバルの両方の効果が得られるようなバランスのとれた練習です。
スピード重視型|今の季節に特におすすめ。体のキレがアップ
15分 ウォーミングアップのジョギング
(60秒 疾走+60秒 ジョギング)×15~30本
10分 クールダウンのジョギング
先ほどよりも短い疾走区間を重視した、つまり速い動きに慣れることを重視したファルトレクです。
疾走区間は短いですが、60秒のレストもそれなりに短いため、意外と練習全体で心拍数や血中乳酸濃度が高い状態を長時間キープできる練習です。
主観的なキツさはそれほどでもない割にしっかり体へは刺激を与えられているという印象でしょうか。
フルマラソンのシーズンになると、持久力を重視した長めのランニングの優先度が高くなると思いますので、大会まで時間のある今の季節はより意識的にこのような短い疾走区間のファルトレクをすると良いと思います。
エネルギーチャージ型|ジョグに爽快さとホルモン効果をプラス
15分 ウォーミングアップのジョギング
25分 ジョギング
(30~60秒 疾走+60秒 ジョギング)×4~6本
10分 クールダウンのジョギング
これは『スピード練習の日』というよりは、普段のジョギングのときに少しだけファルトレク要素を組み込むパターンになります。
30~60秒のような速い疾走を4~6本繰り返すことで、ドーパミン、エンドルフィン、成長ホルモンなどのホルモン分泌を促します。
成長ホルモンは、運動後の筋肉の修復や疲労回復を助けてくれる再生ホルモンとも呼ばれ、年齢とともに減少しがちな分泌を促すことが、トレーニング効果の最大化にもつながります。
これによって、活力向上、回復・成長の促進、自己効力感の向上といったポジティブな変化が得られます。
また、速い動きをすることによって、神経系や筋肉への刺激となり、スピード練習で鍛えた能力が衰えないように維持するトレーニング効果もあります。
ただジョギングするだけの練習をこのエネルギーチャージ型のファルトレクに変えるだけで、走力アップはもちろん、生活全体の質の向上につながります。
自分のレベルに応じて負荷を調整する
上記で紹介したメニューのペース、距離、本数などはご自身のレベルにあわせて適宜、調整してください。
「全体の練習が適度な達成感で気分よく終えられる」くらいがちょうど良いです。
実際に何度かファルトレクをやってみることで、その感覚が分かってくると思います。
「ファルトレクに失敗は無い」と思って、気軽な気持ちで何度か走ってみるのが一番でしょう。
また、日々の調子に応じて負荷を柔軟に調整して良いことをお忘れなく。
「いつもより疲れるな」と思ったら、レストのジョギングを長くしたり、本数を減らしたり、そのときの自分の直感に応じて修正してOKです。
遊びや柔軟性の感覚があることがファルトレクの肝だと思い出してください。
実際に私は「90秒疾走」の区間を80~100秒くらいの幅を持たせて、ちょうど良い目印を目指して走るのを楽しんでいます。
レスト区間のジョギングも「次の疾走区間、行くぜ!」という気持ちになるまで10~30秒くらい延長することもあります。
この、走っているその最中に自由に調整できる柔軟性が、いかに気分に影響するか感じてみてください。
さっそく最初の一歩を踏み出そう
今回ご紹介したファルトレクはいかがでしたか? これなら、気軽な気持ちで走れそうな気がしてきましたか?
スピード練習を習慣化するためには、まず最初の一歩を踏み出して、ファルトレクをした気分の良さを味わうことが大切です。
まずは一番簡単な『エネルギーチャージ型』のファルトレクを早速次の練習から取り入れてみてください。
また、『持久力重視型』『スピード重視型』もどちらかお好みの方をぜひ週に1回からでも始めてみましょう。
(隔週で交互にやるのもOK。週5回以上走っている方なら、週2回実施するのも良いでしょう)
ファルトレクを味方にすれば、スピード練習はもっと自由に、もっと前向きに続けられるはずです。
記録更新に向けた確かな一歩として、ぜひあなたの練習に取り入れてみてください。