夏でも潰れないスピード練習。ファルトレクの実践ポイントと応用例

夏でも潰れないスピード練習。ファルトレクの実践ポイントと応用例

こんにちは。
ランニングショップHolosの小谷です。

3週間前のHolos通信で「スピード練習が苦手な人でも気軽に実施できて、メリットたくさんの練習方法」としてファルトレクの紹介をしました。

そのメールの最後にアンケートを載せたところ、多くの方からご回答をいただくことができました。

お忙しいところコメントしてくださった皆さん、ありがとうございました。

文字数の都合上、全ての質問に回答することはできませんが、いくつか代表的な項目をピックアップして紹介していきたいと思います。

ファルトレクはこれから始まる暑い時期でも「失敗リスクが少なく継続しやすいスピード練習」として非常に使えるトレーニングになります。

(夏はスピード練習をしても計画通りに走れず潰れてしまったという失敗経験をした方は多いでしょう)

ぜひこのタイミングでファルトレク(ひいてはスピード練習の考え方)について再考し、これからのレベルアップにお役立ていただければと思います。

スピード練習革命シリーズを読んだ方々の前向きな声

先月のHoloa通信ではスピード練習革命シリーズと銘打って「スピード練習が苦手な人でも、スピード練習を習慣化して走力アップを狙えるようになろう」というテーマで3つのメールを配信しました。(ファルトレクはその3つめのメールで紹介しました)

この一連のシリーズについて読者の方々からお寄せいただいたコメントを紹介します。

『最近は週に7回は練習回数を取れるようになったので、ジョギングの延長でのファルクトレはかなり参考になりました。メニューかマンネリせず、走ることをより楽しめる気がします。』

→週7回とはかなり充実した練習ですね! 回数が増えると、練習がマンネリ化しやすいという悩みを持つ方もいます。

ファルトレクは日々の練習に緩急をつけ、1回1回の練習に起承転結やクライマックスというストーリーを与えてくれます。まさに、走ることをより楽しめると私も実感しています。

『スピード練習を心理的な負担感を減らして継続できそうです』

→トレーニングは継続が第一だと思います。スピード練習をもっと気軽にできるようになれば、自然と練習頻度も増えて実力アップにつながると思います。

ぜひファルトレクを導入して、1~2か月後に自分の練習ログを振り返ってみてください。きっと以前よりスピード練習の回数が増えているはずです。

読者の方のお悩み~小谷の着眼点をシェア~

次に読者の方からの質問や気になったコメントについて、私の考えをシェアしていきたいと思います。

加齢による体力低下の中でのトレーニング方法

『私は74歳になります。体力が落ちてきている中でのトレーニング方法を模索しています。』
(週間走行距離は39km以下、週5回の有酸素運動、フルマラソン4:30~というプロフィールの方です)

74歳になってもトレーニングを継続して、自分に合った方法を模索しているという探究心が素晴らしいですね!

以下に私なりに役立ちそうな着眼点をまとめます。

①故障リスクを減らすための筋トレ

年齢的にも故障リスクをしっかり抑えながら、運動を継続していくことが何より重要だと直感しました。

故障の要因は様々なので解決策を一般化することは難しいですが、現在のスポーツ科学的にランニング障害を減らす確率の高い方法として提案されているのは筋トレです。

特にスクワット、ランジ系の動作を正しいフォームで行うことがポイントかと思います。

闇雲に実施すると悪いフォームでただ重りを上げるだけになってしまうリスクもありますので、できれば筋トレ初心者なら最初の4~6回くらいはパーソナルで個別にフォームを確認してもらうのがおすすめです。

②ノンインパクト・カーディオトレーニングの活用

故障リスクを抑えながらもマラソンに必要な有酸素運動の能力を鍛えるには、ノンインパクト(衝撃の少ない)な有酸素運動を導入するのも役立ちます。

私の場合は自転車を活用しています。部屋にはスピンバイクがあり、去年から屋外サイクリング用にクロスバイクも購入しました。

スピンバイクは雨天でも使え、クロスバイクはスピンバイクより長時間飽きずに運動できるなどそれぞれ違いがあります。

水泳もノンインパクトな有酸素運動として、上半身も含めた全身の体力向上に効果的です。

ただ、ランニングのパフォーマンスアップにより特化させたい場合は下半身がメインの自転車やクロストレーナーなどの方が効率的かなと思います。

トレーニングフェーズによって違いはありますが、私はトレーニング時間の15~20%くらいをこのようなクロストレーニングに使っています。

故障リスクを抑えながら有酸素運動の時間を増やせるので、結果として走力の向上につながっていると感じています。

③生活習慣を改善して体の回復力を高める

故障はトレーニングで損傷した組織の回復が追い付かないときに生じます。
体力をより鍛えるためにはトレーニングの負荷を高めていく必要がありますが、その負荷で故障しないためには体の回復力を高めることが重要です。

加齢によって自然と回復力が低下するのは仕方が無いことですが、生活習慣の改善によってそれを補うことは可能です。
とくに睡眠と栄養に改善の余地がないかは検討の価値があります。

栄養面では加齢によって抗酸化物質の重要度が増してくることが分かっています(体内の抗酸化酵素が減少するため。エビデンスをみても高齢のグループほど抗酸化物質のメリットが大きい傾向が分かります)。

食事においては、野菜・果物に含まれるビタミンやファイトケミカルは優れた抗酸化物質です。

サプリメントにおいては、Catalyst Recoveryが抗酸化に特に強みがありシニアのアスリートの方々に選ばれています。

ファルトレクのペースの目安を教えてほしい。

ファルトレクはペース設定や本数に決まりがなく、その日の調子に合わせて柔軟に取り組めるというのがメリットですが、初めての方には目安があった方がやりやすいかもしれませんね。

例えば、以下のペースを目安に始めてみるのはいかがでしょうか。

【パターンA】
(800m 疾走 + 120秒 ジョグ)×4~5本 @10km~ハーフマラソンペース
(400m 疾走 + 90秒 ジョグ)×4~5本 @5km~10kmのレースペース
(200m 疾走 + 60秒 ジョグ)×4~5本 @1500m~3kmのレースペース

【パターンB】
(60秒 疾走 + 60秒 ジョグ)×15~20本 @5km~10kmのレースペース

パターン 練習内容 目安ペース
A-1 800m 疾走 + 120秒ジョグ × 4~5本 10km~ハーフマラソンペース
A-2 400m 疾走 + 90秒ジョグ × 4~5本 5km~10kmのレースペース
A-3 200m 疾走 + 60秒ジョグ × 4~5本 1500m~3kmのレースペース
B 60秒 疾走 + 60秒ジョグ × 15~20本 5km~10kmのレースペース

上記の設定は走力によってキツイと感じる方もいれば、そこまでキツくないと感じる方もいるでしょう。

実際に何度か走ってみながら「全体の練習が適度な達成感で気分よく終えられる」となるようなペースに調整していってください。

また、参考までに私の最近のファルトレクでの心拍数のグラフを挿入します(時計はポラールを使用。メーカーによって多少違いはあるかもしれませんが、5つのゾーン分けである程度イメージできるかと)。

図1:『ファルトレク心拍数(持久力型)』この日は200m×5+800m×5+400m×4の順に実施。最初に(200mの割には)軽めのペースの200m×5で体のスイッチを入れる。こうすることで次の800mが動きやすくて失敗しにくいと感じます。(200mより800mの方に重きをおいた練習の場合)

図2:『ファルトレク心拍数(スピード型)』(60秒疾走+60秒ジョギング)×21。
1本目から速すぎないように注意し、5本目くらいで体が動いてくるのを感じます。余裕を感じたため、1本だけ予定より多めに走ってフィニッシュ。

インターバルはできるがテンポ走が苦手な人はどうする?

インターバルなら得意だけど、テンポ走(ある程度のキツさで走り続ける)は苦手という人は一定数いると思います(逆も然り)。

これは、インターバルとテンポ走で肉体的にかかるストレスが若干違うこと、心理面でも違いがあることが原因かと思います。

最終的なレースではテンポ走のように走り続けるわけですから、大会が近づくにつれてテンポ走の比重を高めていくというのがオーソドックスな方法です。

大会まで期間のある今から夏にかけては、インターバルを多めに活用して体力を向上させる。

秋になって大会が近づいてきたら、テンポ走の比率を高めて「一定の負荷に耐え続ける」ことに肉体的にも精神的にも慣れる。

というイメージでしょうか。

質問の「テンポ走が苦手なのはどうしたら克服できるか?」については、根本的にはテンポ走の実施回数を増やして慣れることでしょう。

とはいえ、苦手な練習は気が進まないものですから段階を追ってインターバルをテンポ走に近づけていくのがおすすめです。

例)
1000m×10@4:45/km レスト2分ジョグ
1000m×10@4:50/km レスト1.5分ジョグ
1000m×10@4:55/km レスト1分ジョグ
1000m×10@5:00/km レスト0.5分ジョグ
10000m@5:00/km テンポ走

上記のように、レストを減らしていき最終的にテンポ走になるというのは、肉体的にも心理的にも壁が減るでしょう。

他にも
1000m×10@4:45/km レスト2分ジョグ
2000m×5@4:50/km レスト2分ジョグ
2500m×4@4:55/km レスト2分ジョグ
のように1本あたりの距離を増やしていくというステップもあります。

自分が「これでやってみよう」という意欲のわく方法を創造的に開発していきましょう。

私は、トレーニングはもっと創造的で自由な方が楽しいと思いますし、楽しいからこそ継続できて、刺激に変化が生まれ続けて、成長にもつながると直感しています。

まとめ

今回はスピード練習について読者の方からの質問をベースに話を広げていきました。

Holos通信はこのように読者の皆さんの積極的な参加のおかげでコンテンツを豊かにすることができています。いつも時間を割いてお読みいただき、本当にありがとうございます。

これから暑くてトレーニングには厳しい季節がやってきます。

それでも、目的意識をもってランニングを続けることは私たちの生活に実りをもたらすはずです。

今年の夏は今までより賢く、意欲的に、良い気分でトレーニングができますように引き続き応援していきますね。

スピード練習革命シリーズはこちらのブログにまとめています。まだご覧になっていない方はぜひチェックしてくださいね。

『スピ練革命#1|なぜスピード練習が続かないのか?本当の原因を知ろう』

『スピ練革命#2|スピード練習が習慣化し、記録が伸びる3つの心がけ』

『スピ練革命#3|スピ練が苦手でも大丈夫! 走力を伸ばす3つのファルトレク活用術』

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